2013年6月22日土曜日

企みの足音

困り果ててナオミちゃんに連絡した。どうしてもというときに誰を恃むべきか、心を決める才能が、わたしにはある。

彼女は夜に電話をくれると言ったので、わたしはそれを待つことにして、昼間と夜の時間を過ごした。相変わらず元上司とランチをした。だいたいお天気の話ばかりするが、昨日は夏至だったのでその話を少しした。次に、彼はわたしの味噌汁にオクラが入っているのを見て、オクラの花はきれいだ、という話を始めたのでわたしはとっととオクラを食べてしまって話を終わらせた。野菜の育ち方にはまったく興味が持てないし、 鈴江俊郎の『髪をかきあげる』(※戯曲です)をひとつの心の拠り所にしているわたしは、男の上司の心模様など信用していない。

夜は、このあいだ昇進したTN嬢のお祝いをするため、共通の元上司と三人で食事に行った。いつの世も職場には受け入れがたい他人がいる、というTN嬢を励ますため、これまでのわたしの位置取りのやり方などを、事例を挙げて少し話した。いろいろ、妙な語り口でしゃべり過ぎてしまった気がする。バレンタインのお菓子を協力会社さんに渡し、ホワイトデーにお返しの希望を聞かれたのでデータベース設計書を要求して手に入れた、という話をしたらTN嬢は愕然としていた。そんな感じ(?)で、今より若いころは仕事の未熟さをコミュニケーションで補おうとしていたのだが、今は他者と距離をきちんと取って、そのぶん質を上げるように努めている。距離は、間合いという言葉に変わってわたしを守ってくれるものになるからだ。

ナオミちゃんは約束どおり、夜に電話をくれて、わたしは落ち着きを取り戻した。どこが散らかってどこが壊れているかもわからない状態だったが、ばらばらの部品を拾い、とにかく組み上げようというモチベーションは、保たれた。

部屋にノートや紙の切れ端がいっぱいあって、そのうちのひとつを引っ張り出してみたら、ずいぶん前に書き出したやりたいことのリストが出て来た。当時のわたしは、語感や雰囲気に酔いたかったのかもしれない。以下、リストの一部。
 ・錠前を壊す
 ・家出少年をかくまう
 ・ぬかるみを歩く(裸足)
 ・密会

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