2013年9月11日水曜日

女の成長

「男はせいぜい本音と建前の二層くらいしかないけど、女の多重人格はいくつも同時に働かせることができる」と、かつて母は言った。まあ、覚えてるかは知らないけど。いつだって彼女は、自分が昔言ったことを覚えていない。

私はいつか私に似た娘がうまれる予感があるけれど、父親になる男が悲しみそうだなと思う。ああ、何と言うことだ、お前はお母さんそっくりになってしまったね、悪いところばかり受け継いで。なんて、20年後くらいに。

母が大伯父を訪ねたらしいので、そこから近い私の家に寄ってみた、というメールが来た。私の住むマンションの共有玄関には鍵がかかっていて、鍵がないとエントランス部分(というほど広くない。狭小な階段スペースだ)に入ることもできない。それを忘れていたらしく、私にくれるための花束はマンションのごみ置き場に置いて来たから拾ってね、と書いてあった。「夜まで無事にありますように!」というふうにメールは締めくくられていて、え、ちょっと、ママン、それはおかしいんじゃないの、と携帯電話をにぎりしめて脱力したけど、彼女がずれているのは今に始まったことではないので許した。母を許すということ、すなわち女の成長である。

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