2014年4月24日木曜日

逃避行

今君が死んだ夢を見た、とても悲しかった、と言われて、私のかわりに死んだ何かを、私はありがたいと思った。その日私が見た夢は、部屋を二匹の猫に占拠される夢で、他にも恐れる人やものが多く出てきたし、夏物の服の試着もうまくいかず、待ち合わせにも失敗した。起きてから部屋の隅に意味もなく座っていたら、小さな蜘蛛の巣を発見して恐ろしかった。

それが逃避である事は自覚しておきたまえ、と男は言った。「たまえ」などとは言わなかったが、言ってもおかしくないような場面だったので、今はそのように記す。だがしかし、逃避するだけあって、その対象を直視するのがなかなか難しい。でも、逃げた先で書く言葉がきちんと私の歴史を積み上げてくれるならそれもいい。

駆け落ちするなら海辺の街と相場は決まっていて、それは彼らの持つ事情より深く、荒々しいものが海以外にないからである。山の中は鬱屈しすぎており、門前町や城下町は人の気配が濃くて生きられない。

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