2014年4月28日月曜日

何ひとつ

その時、皮肉に似た言葉をいくつか軽く言えそうだったが、相手があまりに意気消沈しているのでやめた。供養を疎かにしているからこういう時に大ダメージをくらうはめになるのである。でも、思った言葉を口にするのはともかくやめた。今はその時でなかったからだった。眠れぬ夜、数えられるために走り出していく羊の身体を優しく撫でて、眠らせてあげたいと思うのも私なのである。

話し合った後、男はコーヒーカップをテーブルに置いてずっと黙っていた。どうしたの、と訊くと「何ひとつ変えるつもりがないんだという事がわかったからもういい」と言われた。彼の言うとおり、私は自分の何も変えないまま強情に生きているのだろうか。それとも、変わったから彼の基準に適応できなくなったのだろうか。筋を通そうとするからうまくいかないのか、筋を曲げたから軋みが生じているのか、という事と似た話で、わかりあう事はなさそうだ、という事だけがわかった。

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