2014年6月7日土曜日

死んだら気づく

この頃、中学時代に家庭科の授業で縫ったスカートを履いている。単純なデザインで、柄も子どもっぽいといえば子どもっぽいのだが、三十を回り、顔つきから俗っ気が抜けてきたこともあって、また似合うようになってきたのである。このスカートの布は、13歳の頃に祖母と一緒に蒲田の手芸量販店に買いに行った。祖母が亡くなって久しいが、彼女のことはいつも考えている。祖母が死んだ年の冬、私は処女を失った。だから祖母の知っている私は純潔のままであり、これまで経験したいくつかの男性とのいざこざ、ある種の非行などは全部彼女の死後の出来事であるので、私のおこないによって彼女の心をわずらわせることがなくてよかった。

MN嬢が猫を飼ったので、会いに行った。ベッドの上には小さくて可愛い少女猫が、二匹鎮座していたが、私が行くと戸棚の上にするりとのぼってしまった。花の香りのする紅茶を淹れてもらって、文芸の話をした。「普通の言葉しか使ってないのに、この人が書く文章は特別」っていう人が好き、と強く宣言した。猫は時折、戸棚の上から私たち二人の様子を覗いていた。

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