2014年7月5日土曜日

愚鈍な女

愚鈍な女が赤い電車に乗っていた。愚鈍だと思ったのは、虫が彼女の衿もとを這っているにも関わらず彼女はスマートフォンに夢中で、口と股をひらいて、ぼうっとしている姿を本当にみっともないと感じたからである。角がたってもいい。人の振り見て我が振り直せばいい。あの愚鈍さには我慢ならない。手元のスマートフォンに目を落としているのに、服の上を歩き回る虫になぜ気づかないのか。どうしても理解できなかったし、許せなかった。

書きたいことはいくつかあったはずなのに、記憶が長い時間もたないようで今ここに書くことができない。こうして死んでいったらどうしよう、という気持ちには四か月に一回くらい、なる。

百貨店のエレベータの前で、爺が店員を怒鳴りつけていた。「もう最近の百貨店は何もなくてだめだよ」と言い続けて、店員と私を萎えさせた。そのあと、爺と同じエレベータになってしまったのが最悪で、東南アジア系の乗客が「閉」と「開」を間違えて二度も押してしまったのに爺が腹をたて、大声で怒鳴り散らしたのだった。しかも、爺は私のほうを向いて怒鳴ったのだ。びっくりして何も言えずにいたが、今思えば蹴り出してぶっ飛ばしてやればよかった。でも本当は、百貨店の中で大乱闘になってもいいから私をかばって守ってくれる人があの時そばにいたらよかったのに、と思わずにはいられない。

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