2014年10月24日金曜日

フィールド

小声で歌っていたら「それ、もしかしてドラクエ?」と訊かれたので、そうよ、と答えた。きれぎれに聴こえただけでよくわかったものだと思うが、わかってもらえたらいいなともほんの少し思っていたことに、言われてみて気付いた。

連れられてゴルフをした。練習場では其処彼処で人々が、重たいクラブを振りまわして空気を切り、ボールを打っていた。その速度とエネルギーが恐ろしくて気が散った。「腰から上は動かさないで、腕をこうやって引いて」などと教わったけれど、恐ろしさは消えなかった。せっかく熱心に教えてくれたのに、相手に悪いことをした。私がつまらなそうな顔をしていたせいか、早くに切り上げることになってしまった。振り回される無数のクラブの恐ろしさから逃れられて、ほっとした。

二人で車に乗り、郊外を走る。かよっていた小学校と中学校の前を通って「ああ、こんな狭かったっけな」と言いながら、男は車を走らせ続けた。スマートフォンからは、ドラゴンクエストの旅路を彩る音楽が流れ続けて、子どもの頃に好きだった音楽もかけてみたりして、何もかも失われているのに、まだこんな穏やかな時間を持てるということが本当に悲しくなってしまった。

帰りしなに「女の幸せは夫次第よ」と、女が私に目配せした。そんなことにうなずくわけにはいかなかったけれど、この人はずっとそうやって生きてきたのだと思うと、堆積した時間の蒙昧さに目が眩んだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿