2014年11月5日水曜日

推察

還暦をまわって何年も経つほどの母の従兄が田舎からやってきて、親戚のたくさん集まった挨拶の場で「戦争が始まったら、あちらは田舎ですから、皆さんどうぞ疎開していらしてください」と言ったので、心底ぎょっとした。その場にいた私の従姉は二歳の息子を抱きしめていて、彼の安らかな寝顔に対して、母の従兄の言葉はあまりに不穏だった。酒の席の、しかも終わりの挨拶だったので、私以外の人は少し赤らんだ穏やかな顔で(まるで田舎を懐かしむかのように)聞き流した。

集まりが解散になったあと「これからどうするの」と聞かれ、病院に行く、と言うと相手が少し黙り、その沈黙から、彼女は私が妊娠したのではないかと推察しているのだということがわかった。

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