2016年2月12日金曜日

過剰な世界

スパゲッティを食べたのはついさっきで、私は横浜までダンスを観に行くために着替えて、ほんのちょっとやり取りをするために携帯電話を持ち、画面を見たのだった。はじめはしゃくりあげるところから。次に声が抑えきれなくなって、そうしたら後はもう床に倒れ臥して、過呼吸とだらだら溢れる涙になすすべもなく、自分と相手を呪って泣き叫んだ。顔も両手も唇も痺れ、もうだめだ、今度こそもうだめだ、と思った。動かない指で、何とか薬の致死量を調べた。20錠くらいではなんにもならないと書いてあって、安心したのだけれど、20錠はやっぱり一度に飲むには多い気がして、どう決めたのだったか、6錠だけ飲んだ。電話の電源は切った。

目が覚めると、残っていた14錠は空になっていた。何も覚えていなかった。でももう驚かない。睡眠導入剤というものが、眠らせた人間に何をさせるか私はすでによく知っている。立とうとすると足がよろよろ崩れて何も出来なかった。こんなに泣かなくてもいいように、新しい先生に出会えたのに、全部無駄になってしまった。誰かが来たのか誰も来なかったのか、頭を壁にしたたかにぶつけた気もするし、ままならぬ足のせいで転んだ気もするが、いっさい何の記憶もない。コンロには昼に別の鍋をかけた。なのに、スパゲッティを食べたのはついさっきのような気がする。あれは昨日の昼で、そこから私は前後不覚になるまで気が狂ったように騒いで、ひとりで無理矢理眠って、24時間が経った。

目を閉じると目眩がするし、ベッドがぐるぐる回って波打つ。隣りに誰か滑り込んでくる気配もあるし、このまま踏みとどまる理由がない。

今の自分の状態を、母にも誰にも言ってはいない。これを読んだ誰かが母に言うかもしれないが、そうであれば伝聞のルートを特定するまでもないのだし、むしろ逆恨みには都合のいいことだ。

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