2016年7月26日火曜日

ある日(水夫、ミント)

昨日は夜、リゾートホテルの大浴場を借りに行った。3年前、そして去年、私はこのホテルに泊まったはずだけど、大浴場のことは覚えていなかった。初めて来るなあ、などと呑気に考えていて、だけど露天風呂に行った時に、あれっ、このお風呂から星を眺めたことが過去に二度はあるな、と急に思い出したのだった。記憶が薄れ、消えてゆくさまには絶望しかない。だから毎日書き残しているわけだが、逆に言うと書いたこと以外は忘れる。露天風呂では私より少し年下に見える女がふたり、半身浴で、職場の愚痴をずっと言っていた。「彼のつくる資料が見づらい」「そんなやつ、人として無理」などと、リゾートホテルに来てまで言わなくてもいいだろうと思った。私は女と温泉旅行なんかしないから、露天風呂で友だちと喋りたい気分はわからない。

しかし大浴場で疲れを取ったおかげで、今日は元気に働いた。暇だったから、体力を消耗しなかったとも言える。

夕方、スイフという犬を連れた夫妻が喫茶に寄ってくれた。スイフの名の由来は「水夫」から来ている。白くて茶色くて、まつげとまゆげのある可愛い犬だった。また会いたい。私のことを覚えてほしいから、優しく接した。スイフの飼い主である夫妻は、鋭くやわらかい物腰で、生き様はセンスと愛に満ちており、とても眩しい。

持ってきたミントを、挿し木で増やそうと試みて失敗した。丈夫な草だからと言って、適当に扱ったのがいけなかった。最初の水上げに失敗したから、根も張らなかった。喫茶で働いていると、自分が相当にざっくりした見積で行動していることに気づかされ、愕然とする。分量も時間も、きっちり測ったって毎日同じ味にはならないというのに、ざっくり見積もってどうして繊細な料理がつくれるだろうか。今日もカレーにスパイスを入れる時、一気にどっと入れたせいか、顔にカレーがはねて熱い思いをした。そんなことがあるたびに、おのれの生き方を多少反省する。

0 件のコメント:

コメントを投稿